

木は、わかりやすく言葉では会話はしません。
しかしコミュニケーションはとっています。
言葉の代わりに、香りで自己表現をするのです。
これに関係した以下のようなことが、かつて観察されたことがあります。
キリンは、サバンナに生えているアカシアの木の葉を食べます。
アカシアは、この捕食者を追い払うために葉の中に有害物質を集めます。
毒に気づいたキリンは、当然移動します。
しかしただ隣の木に移動するのではなく、100メートルは離れたところに移動して食事を再開します。
なぜこれほど離れるのでしょうか。
それは、葉を食べられた最初のアカシアが、まわりの仲間に警報をしらせるガス(エチレン)を発散するからです。
警告をうけた木は、まだ食べられていない段階で有毒物質を準備しはじめます。
それをキリンは知っているため、食べている木よりも遠い場所や、風上に移動するのです。
このようなことはサバンナ以外の森でも行われているようです。
ブナやナラなども同じようなことをしているようです。
また、人間と同じように、木も電気信号を走らせて体内に情報を伝達することができます。
ただその速度は、人間にはほど遠い速度です。
一分で一センチしかすすまないといわれています。
そこから葉の中に防衛物質を集めるまでに、一時間ほどかかるようです。
自分の身に危険がせまっているときでさえこの速度です。
樹木は人間よりは、おおらかなのかもしれません。(文:ドサンコ)
参考文献
『樹木たちのしられざる生活』ペーター・ヴォールレーベン著 長谷川圭訳
ハヤカワノンフィクション文庫